日本SF傑作選5-光瀬龍

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 本書はアンソロジスト日下三蔵氏による光瀬龍のスペースSFの秀作を集めた短編集です。特に未読であった、『廃墟』が収録されているのが嬉しい。

 3部構成の本書は、短編集2.5冊分に相当し、ボリュームも満点、’60年代から’70年代の光瀬SFを堪能できます。題名に年号が付く「宇宙年代記」ものは収録されていません(理由は巻末編者解説参照)がいずれも秀作揃いでやはり面白いし、年齢を重ねた後、再びふれた”光瀬節”ではまた違った感慨や面白さが見えて来ます。

  長編『たそがれに還る』の原典を思わせる、巻頭の『無の障壁』から読み手は光瀬ワールドへ引きずり込まされます。
 「東洋的無常観」で周りを取り囲みながら、辺境でのスペースマン(宇宙技術者)達の活躍や過酷な現実を見たり、過去の栄光を胸にひっそりと暮らすスペースマンの悲哀や異星人視点での哀歌など光瀬龍の世界が眼の前に展開されていきます。
 そして最後は、作者の思い入れも深いと言う火星、東キャナル市を舞台にし、古株スペースマン達の中にひっそりと伝わるとされる、東キャナル文書にまつわる連作で幕を閉じます。

 第2部収録の『廃墟』では意識のフェードイン・フェードアウトを活字の世界で視覚的に表現しようとしており、『喪われた都市の記録』や『百億の昼と千億の夜』で見られた技法の原点を見ました。

 こうして通読すると、初期の気負いと力が入りすぎるほど入った作風から良い意味で肩の力が抜け昇華されていく作風が見て取れます。
 しかし、変わらないのは、女性キャラクタの独特な魅力です。本書には残念ながら主要な女性キャラは出てこないですが、詩人光瀬龍が描く女性キャラの活躍も作品群の魅力の一つです。
 また、作品の中で使われる道具も魅力を後押ししています。私などは「メタポライザー」が出てきた時点で撃墜されまくりです。

 そして、宇宙SFに疲れたら、作者が描きたかった時代劇に題材をとった「時間局員」シリーズ、『征東都督府』や『幻影のバラード』などの時代SFがお勧めです。

(どうもチョッチ褒めすぎですが、ファン・バイアスが掛かっているので、ご容赦ください。)


著者:光瀬龍、編者:日下三蔵、出版社:早川書房、シリーズ名:日本SF傑作選

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Posted by null-a